2020年7月30日、吉田隆之准教授が『芸術祭と危機管理―表現の自由を守るマネジメント』を水曜社より刊行しました。
「あいちトリエンナーレ2019」の中止事件からこの8月で1年。
あいちトリエンナーレ2019に纏わる事態を総括した本です。事実を知り、学問的態度を!そんな思いで、ほぼすべてを新たに書下ろしました。
最近では、大村知事のリコール運動がしかけられたり、トリエンナーレという名称を使わないという方針が打ち出されたり、よくも悪くも話題が事欠かない状況です。1年がたとうとするからこそ、冷静かつ、客観的に振り替えられることもあると思います。また、コロナ禍で芸術文化のあり方自体が根本的に問い直されようとしています。
本書は、一研究者一個人の視座から、つぶさに展示中止から一部再開、直近に至る経緯をたどっています。
再開にこぎつけた舞台裏など、津田大介(あいちトリエンナーレ2019芸術監督/ジャーナリスト)へのロングインタビューで初めて明らかになる事実も記されています。まずは、事実を共有することが必要だとの思いからです。
そのうえで、なぜ展示中止が起きたのか、なぜ世論が分断されるのか、解決の処方箋があるのか、文化庁助成がなぜ取りやめ発表に至りなぜ減額復活したのか、県・市の第三者委員会がなにを判断したか、などなど「トリエンナーレ事件」の顛末にまつわる多くの“なぜ”を解明しています。
ネットなどでの断片的な知識しか持たない方にも、あいちリエンナーレ2019にまつわる事態を俯瞰できよう、かつ、一般書として分かり易く読めるよう配慮しています。
一方で、物議を醸す展示に対する電凸や自主規制を危惧する文化事業、文化施設関係者も少なくないと思われ、芸術祭の必須の危機管理が、表現の自由を守るマネジメントであることを説いています。
そうした点では、リスクマネジメント、ダメージコントロールの必読書ともなっています。
アマゾンなどのネット販売はもちろん、一般書店でも販売しています。
ご拝読いただきましたら幸いです。